第十章 让你成为我的未婚妻吧!(2 / 2)

私は手をかざし、再び詠唱する。

「水よ、我に仇なす者を貫く弾とならん。【ウォーターショット】!」

バシッ!

今度は水の魔法を放った。

先程の魔法よりも威力は劣るものの、それでも魔獣を仕留めるのには十分なものだった。

魔獣は地面に倒れ伏す。

しばらく痙攣した後、動かなくなった。

どうやら死んだらしい。

「ふぅ……これでよしっと。さすがに強かったけど、何とか勝てましたよ」

「イザベラ、お前……」

「殿下、大丈夫ですか?怪我などされてはいませんか?」

「あ、ああ。お前のおかげで助かった。だが、今のは一体なんなのだ?どうして、あんな魔法が使える?」

「あれはただの土魔法と水魔法ですよ。攻撃魔法としては、大したことありません」

「そ、そうなのか?しかし、俺が知る限り、普通の魔法士ではあれほどの魔法は使えないはずだぞ?」

あれ?

そうだっけ?

『ドララ』では、もっと強い魔法があったような……。

いや、あれは主人公アリシア視点のゲームだからか。

一般的な魔法使いの感覚では、今の私ぐらいの魔法でも十分過ぎる威力なのだ。

うっかりしていた。

「畑仕事の副産物ですね。土魔法と水魔法だけは得意なのです」

とりあえずこう誤魔化しておこう。

実際には他の属性も使えるけどね。

あんまり目立ってしまったら、エドワード殿下に目を付けられる。

バッドエンドを回避するために、できるだけ彼には関わりたくない。

「……ふむ。よし、決めたぞ!」

エドワード殿下が何かを決意したように言う。

「何をでしょうか?」

「お前を俺の婚約者にしてやろう!感謝しろよ、イザベラ!」

「えぇ!?」

何を言い出すんだ、この王子様は。

私は思わず叫びそうになるのを必死に抑える。

落ち着け私。

冷静になるのよ。

ここで取り乱してはダメだ。

まずは状況を整理しよう。

私はエドワード殿下に尋ねる。

「それはつまり、私と婚約したいということですか?」

「そういうことだ。喜べ、俺の妻になれば贅沢な暮らしができるぞ」

「申し訳ございません。お断りします」

私はそう断言する。

「なにぃ?」

「そもそも、なぜ急にそのような話になったのでしょう?」

「それはお前が『面白い女』だからだ」

「はい?」

「俺はお前のような変わった奴を見たことがない。お前なら退屈しないで済みそうだ」

なんということだ。

『面白い女』ポジションは、『ドララ』における主人公アリシアのポジションなのに。

そこからエドワード殿下とアリシアは去÷小?說→網を育んでいき、それに嫉妬したイザベラがアリシアに嫌がらせを行っていくのだ。

そのポジションが私に置き換わった……?

「私を玩具にしようとなさっているのですね」

「別に取って食おうというわけではない。ただ一緒にいるだけでいいのだ。俺と一緒にいれば、それだけで箔が付くだろう?」

「私は箔になんて興味ありません。この話は……」

エドワード殿下からの申し出を改めて断ろうとした私だったが、お父様がそれを遮った。

「待ちなさい、イザベラ。エドワード殿下のお気持ちを無下にすることは許さん」

「ですが……」

「エドワード殿下、娘は確かに非凡な才を持っております。社交術やマナーも、これから覚えていけば良いことでしょう。しかし、まだまだ子供。婚約相手として相応しいかどうか、じっくりと時間をかけて判断するべきではありませんか?」

「ほう、貴殿は俺の考えを否定すると?」

「否定するつもりはありません。ですが、もう少し時間をいただけないでしょうか。今すぐ返事をすることはご勘弁を。それに、陛下への相談も必要でしょう?」

「……わかった。今日のところは引き下がらせてもらうことにしよう。俺が王都に帰還して父上に相談した後、正式に答えを聞かせてもらうぞ」

エドワード殿下がそう言う。

とりあえずこの場は乗り切った。

その後は一度アディントン侯爵家の屋敷に戻って支度を整え、彼は馬車に乗って王都へと戻って行ったのだった。